早いもので、東日本震災から10年になります。あの時、私は山梨県大月市にある工場に出張でいたのですが、確か震度5強の揺れで工場内が危険との館内放送とともに屋外に退避したことを覚えています。揺れがおさまり、工場の会議室に戻り、テレビをつけましたら、仙台空港が津波で洪水になっている光景や、気仙沼や石巻の悲惨な映像が映し出され、腰が抜ける思いがしました。
仙台の自宅の固定電話にかけても、妻や息子の携帯に電話しても、メールをしても音信がなく、結局はその日の深夜1時過ぎに、妻が公衆電話から私の携帯に電話をしてくれ、やっと家族の無事が確認できました。(連絡が一番遅かったのが東京にいた娘で、携帯の電池切れだったとかで、実際は寝ていたようで、まったくもうでした!)
皆さんも同じような経験をされたのではないかと思いますが、災害になって初めて、電話やネットなどの通信機能が社会生活のインフラになっていることを痛感します。国も情報通信の強靭化を図るため、震災の数年後に、災害に強い情報通信の研究を被災地でもある仙台に研究センターを設置して行うことになったのですが、私は現在、縁ありましてそのセンターで勤務しております。
私はセンターの広報活動や研究成果の実証実験のお手伝いで、簡単に言いますと、紙屋ではなく、万屋(よろずや)の業務をしております。研究センターの大半の人は博士ばかりで、私のような企業出身の元セールスマンは稀な存在ですが、情報通信(ICT)の最先端の研究を垣間見ることができます。
“レジリエンス”という言葉があります。聞きなれない言葉ですが、柔軟な、弾力的な、しなやかな、復元力のある、という意味だそうです。少しくらい損傷があっても生き残った部分で最低限の通信機能を確保する、そんなニュアンスですが、災害に強い情報通信の研究というのは「レジリエントなICT」の仕組みを研究することになります。
私も前職ではICTに関係する仕事をしておりましたが、この分野の技術進歩はとても早く、現在の技術レベルは私の理解をはるかに超えていますが、ICTが様々な分野で活用されています。例えば、複数台の基地局をメッシュ状につないで、どこの基地局が壊れても最低限の通信ができるメッシュネットワーク技術や、災害時に投稿される一般市民のTwitter情報をAIが分析して、被災情報や救援情報を地図上にプロットしたり、さらに、LINEに登録しておくと、災害時に避難場所までAIロボットが誘導してくれるとか。防災や減災に係るICTの活用は目覚ましいものがあります。
その一端ですが、総務省・東北総合通信局主催で一般公開されているセミナーがありました。下記のサイトをご参考下さい。
「ICTの活用による防災・減災の推進に関するセミナー」
https://www.soumu.go.jp/soutsu/tohoku/kohoshi/20210319ICTbosai_seminar_00001.html
特に、
〇株式会社ウエザーニューズの「防災チャットボットSOCDAが実現する災害情報の把握と提供」
〇サイボウズ株式会社の「過去災害から学んだICT活用による災害時の住民協働の仕組みづくり」
が面白かったですね。お時間のあるときにご覧なって下さい。最近特に多くなったと思われる自然災害に際してICTをどう有効的に活用するのかという視点がとても参考になりました。
以上、ご参考まで投稿させていただきます。
紙屋 司