投稿者:伊藤 弘悦

2022年北京オリンピックが2月4日に開幕しました。
出場しているアスリートの皆さんは並々ならぬ努力を続け大会に臨んでいます。
素晴らしい技、スピードをしばらく楽しみたいと思います。
新型コロナの感染拡大でいろいろな活動が制約されておりますが、思索をめぐらし静かにお気に入りの飲み物を愉しむ良い機会と考えたいとおもいます。
壷中之天(こちゅうのてん)という言葉があります。これは中国の故事に基づくもので、壷の中にある別世界を楽しむ話しが入っています。(後漢書*)
こういう小さなものの中に別天地があるという想定は他にもあり、西遊記で孫悟空が瓢箪に吸い込まれてしまう場面を覚えている方も多いのではないでしょうか?
金角大王、銀角大王に捕えられた三蔵法師たちを助けるために、術くらべをする場面ですが、この時銀角大王の持っていたのが紅瓢箪(あかひょうたん)です。

さて標題の「瓢箪から駒」ですが、起こりそうもないことが起きることや意図しない僥倖
(ぎょうこう)を得る場合などに使われます。こちらは「東遊記」の中の話しで張果(ちょうか)
という仙人が白いロバ(白驢)を瓢箪から出して移動した寓話が由来です。
話しは日本に飛んで、17世紀初頭、徳川-豊臣の最終戦である「大阪夏の陣」の前の「大阪冬の陣」の後のことですが、徳川方は大阪城の濠を埋めるなど冬の陣の後も京・大阪に残っていました。
その頃の賭け事として流行していた「香木合せ」--今風に言えば日本酒、ワイン、コーヒーや
アロマオイルの目隠しテースティングでブレンド(配合)が当れば賞品を貰える遊び--が陣中で行われていて、徳川の旗本達が刀剣や象嵌の鍔を賭けて遊んでいるところに伊達政宗公が瓢箪を賞品として出したそうです。
他の賞品に比べてみすぼらしいので、旗本達はこれに手を出さず残っていました。
最後に「香木合せ」を正解した旗本がしかたなく持ち帰ったところ、翌日伊達家に呼ばれ素晴らしい馬と鞍が贈られたのです。
驚く旗本に、政宗公は「瓢箪から駒がでると言うではないか」と大笑、後からこの話しを聞いた旗本達は味なことをすると感心したという逸話です。仙台マスターズ倶楽部の会員の皆様に活動について要望を伺ってますが、利き酒やワインのテースティングのような企画を希望するご意見が多くありました。
集まって談笑できる日を待ちながら、皆さんそれぞれ腕を磨いて、お話しを仕込んでみましょう。

 *後漢書:中国の後漢(AC25-220)。この時代の役人であった費長房(ひちょうぼう)が
薬売りとなっていた仙人の老人、壷公(ここう)の持つ壷の世界に入り素晴らしい建物や美酒と
美味しい料理などで歓待され、仙人の修行もする話し。