投稿者:工藤 三四郎

私たちは自分が気づかないないうちに何かにつき動かされて行動しているようです。
何かというのは誰でもが持っている脳のクセです。
人は脳のクセによって騙され、よく間違った判断をすることがあるということです。
専門的には認知バイアスと言われるものです。
人は見たいものだけを見る。自分の都合のいい情報だけが目や耳に入る。自分だけは特別。    などと人は自分に都合よく自分を取り巻く環境を認識するクセを持っているそうです。      そうでなければ人は生きていくのが辛くなるからでしょう。

脳が簡単に騙される事例として、ラベルで味が変わるというものです。
苦味の強いビターチョコレートと甘味の強いミルクチョコレートを用意して、包装紙だけを付け替える。すると、ビターチョコレートを甘く感じ、ミルクチョコレートが苦く感じてしまうという人が多くいるそうです。
包装紙を見て脳が騙されたというわけです。

皆さん方も絵や映像を見て錯視によって物の長さや大きさを簡単に間違えてしまう経験のある方もいると思います。同様の試みが専門家によって行われており、人の脳は騙され易いという傾向を持っていることに間違いはないようです。

私たちの身近なところでも、銀行員と言われると真面目で誠実な人だとか、高いワインと聞いただけで美味しいと感じてしまうことはあるでしょう。同じ話でも著名人が話すとありがたく感じてしまうなど上げればきりがありません。

最近ではあまり話題とならないワクチン開発で使われるブラセボ(偽薬)は、人の騙されやすい脳のクセを取り除くために使われます。人は効きめのある成分が入っていない薬を飲むことで効き目があると思い込んで症状が改善することがよくあるそうです。ですから薬の本当の効果を確認するためは臨床試験でグループを2つに分け開発薬を服用したグループとブラセボ(偽薬)を服用したグループで比較し、その効果を判断しなければならないわけです。

人間は進化の過程で脳に刷り込まれたクセだけでなく、人は経験や知識の蓄積によって生まれるクセもあります。多くの経験は概ね正しい判断に導くはずです。
気をつけなければならないのは、それが固定観念や思考のクセとなり脳のデフォルトとなり、誤った判断をしてしまうこともあるということを知っておくことが大事です。
頭が硬いねと言われたら現在のデフォルトの見直しが必要かも知れません。

私たちは自分にクセがあるという事実に気づきません。
他人のクセには容易に気づくことができても、自分を含め案外と自分自身のクセには気づかずに生きている方が多いのではないでしょうか。
未知は自分自身なのだということを知ることが大切なのだと思います。

ギリシャの哲人ソクラテスは、アポロンの神殿に刻まれた“汝自身を知れ”を引用して人に説いたそうですが、2000年前も今も人間が考える元である脳そのものはあまり進化していないのだなとあらためて思います。