投稿者:工藤 三四郎

日本の株式市場は、過去の最高だった1989年12月につけた株価を更新し34年ぶりに過去最高値を記録するなど絶好調です。株式投資をしている方に取っては思わずニンマリといった毎日かもしれません。株の世界では音楽が鳴っているうちは踊り続けるのがいいと言われているようで、素人目にもまだしばらくは鳴り続くようにも思います。しかし、永遠に鳴り続けることはない。いつかはこの音楽も鳴り止むのでしょう。それがいつかは誰にも分からない。私は株を所有していませんが日本経済復活のためにできるだけ長く鳴り続けて欲しいと願っていますが。

株価は景気の先行指標と言われていますので、日本経済にも本格的に明るい兆しが見え始めたということでしょうか。期待を込めてですが私は今年が日本のモノづくりの復活元年のチャンスではないかと思いたいです(前にも同じようなことを言ったかもしれません)

失われた30年と言われ先進国の中でも日本だけが取り残され感がありましたが、久々に明るい雰囲気になってきているように思います。

その象徴が熊本TMSCの半導体工場の開所式をはじめ北海道、宮城県、熊本TMSC2期工事計画とこれらの半導体工場の進出計画です。モノづくり復活のカギは半導体にあるように思います。

日本製鉄のUSスチールの買収の動きなど日本のモノづくりの復活を予見させる動きと期待せずにはいられません。ただこの買収は、トランプ前大統領の反対、バイデン大統領もこれに同調でご破産になる可能性もありそうです(フェイクニュースかもしれません)

カーネギーさん創業のUSスチールがアメリカの近代化の象徴的存在であることがその理由のようです。

モノづくり復活の条件は揃っているように思います。まずは円安傾向が続いている。この円安はモノづくりには絶好のチャンスになると思われます。どの国も自国の通貨安を背景に経済成長をしてきた経緯があります。

また、国内企業は長年にわたり給与を抑え込んできたことでアジア圏でも日本の人件費が相対的に低くなってきています。日本の得意とする創意工夫により十分コスト競争力をつけることができるのではないかと思います。

何よりもここきて大きな変化が経営者のポジティブな発言です。この春の賃上げ交渉でもまだ大手企業ではありますが満額回答をするなど、数年前までは将来が不透明だと言っては給与を抑え込んできていましたが今年の気前の良い回答は先行きに自信を持ち始めている証拠ではないかと思います。

日本の半導体はかっては世界シェア50%超であったこともあり、半導体事業のノウハウはまだ残っているのではないかと思われます。東京エレクトロン、ディスコ、レーザテック、アドバンテストといった半導体装置メーカーは現在でも世界トップシェアを誇り依然元気だし、超純水のクリタ、処理薬剤、ロボットや精密器械は日本の得意分野で半導体産業を盛り上げるための産業基盤は整っています。

モノづくりの復活に向けた環境が整った今、リスクをとって思い切って事業と人への投資をスピード感を持って攻めることが大事ではないかと思います。日本の半導体産業の衰退はリスクの忌避と意思決定のスピードが遅かったと言われていたように思います(アメリカの圧力が強かったのかも)

産業構造がどんどんモノからサービスへ変化しているとは言え、安全保障の観点からもしっかりとしたモノづくりの産業がないと骨のある堅牢な国にはなれないような気がしてなりません。

台湾の半導体メーカーの日本進出は中国脅威による生産拠点のリスク分散が大きな理由だと思います。様々な要因があるにせよ日本が生産拠点に選ばれた背景には、やはりモノづくりの潜在能力やインフラが評価されたのでしょう。

そんななかで一番の課題はやっぱり人材で優秀な人材がモノづくりの業界に集まってくれるかどうかではないでしょうか。少子化の影響もあり世界規模で優秀な人材の奪い合いになっているようです。

新しいモノづくりに求められる人材像は高い倫理観を持ちながら、デザインやソフトウェアを知り、何を・なぜやるのか考え抜くことのできる、これまでとは違った能力を持つ人材ではないかと思います。そんな人材どこにいるという話かもしれませんが。

半導体に限らず将来のモノづくりには優れて異質な人材をどれだけ揃えられるかにあるのは間違いないでしょう。岩尾俊兵氏による「日本企業はなぜ強みを捨てるのか、日本式経営の逆襲」も確か人材に依存するという文脈で語られていたように思います。

こう考えると成果が出るまで時間がかかりますが、実は人への投資が日本の将来国家価値増に向けて最も効率的な施策になるのかもしれません。